産業色彩技術協会

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ホッとする知財

 知財を見聞きして、ホッとすることがあります。例えば、「ああ、このような技術がこんな特許になるのだ」、とか、「そうか、この商標があるから事業のブランド力に一役買っているんだ」、或いは、「この知財のお陰でみんなが助かっているのだ」、などなど、色々な意味でホッとするのです。
 よく、知財とは排他的独占権だから、競争相手には煙たがられるもの、という側面が強調されがちです。しかし、日頃から、知財権で相手を排除するのではなく、むしろ、協調を促すものと考えている私にとって、親しみが持てる知財に出会ったりすると、余計に嬉しくてホッとするのです。

 ひとつ、例をご紹介しましょう。これは実用新案ですが、思わず笑みがこぼれてホッとする知財です。出願人は誰もが知る大企業です。そしてこの知財、大分県のしいたけ栽培者に実施許諾されました。
 実用新案登録請求の範囲には「しいたけの傘表面にほぼ平らな切削部が設けてあり、その切削部に文字・図案等を焼刻してあることを特徴とするしいたけの加工品」とだけ書いてあります。これも単純と言えば単純、先ずは写真を見てください。
イメージ  しいたけの傘の表面に焼印を入れる、それだけの知財ですが、ホッとしませんか。しいたけの傘に「寿」の文字が描かれているのですが、貰った人は嬉しいでしょうね。しいたけと、このようなご祝儀ことば、絶妙なマッチングだとは思いませんか。私だったら、食べずに飾っておきたいくらいです。
 この知財で感じたホッとしたこと、実は、二つあります。1つは、この知財自体の持つユーモアですが、もう一つの「ホッ」は、大企業がしいたけ生産者に実施権を許諾したことです。なぜこの企業が出願したか、その動機は分かりません。しかし、実際に、しいたけ生産者に許諾したことを知り、私はホッとしたのです。
 多くの大会社における知財戦略、それは熾烈なものです。ライバルを制する為に、場合によっては事業領域を超えるまでの知財を出願し、事業化しようとしまいと、とにかく出願だけはしておこうと、正に、根こそぎ出願するような姿勢を見ることがよくあります。しかし、この知財はしいたけの生産者に実際に許諾され、しかも商品化までされたのですから、正に、私が理想とする協調・協働を促す役割を、充分に果たしているのです。

 知財は早い者勝ち、最初に出願した者が権利を受ける。確かにそうなのですが、その権利も、出願した者が実施しなければ、知財そのものは塩漬けになり、誰にも恩恵を与えることはありません。しかし、このように実施権を許諾することで、縁もゆかりも無かった者同士がアライアンスで結ばれるのです。異なる事業分野にいる者でも、知財を通じてアライアンスを拡げて行く、素晴らしいことではありませんか。
商標(色彩商標)でも、このような事例が起き、その時もっと多くの会社に許諾された場合、ひょっとしたら商標が普通名称化するなど、その商品やサービスを牽引しながら広がっていくことになるかもしれません。おもしろいじゃありませんか。
 ホッと、心に感じる知財が増えること、それは新しい世界が平和になることかもしれません。

2016.04.01

多喜義彦のコラム

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