産業色彩技術協会

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一般社団法人産業色彩技術協会は、塗料塗装業界の進歩と発展を目指します。
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データ改ざんの話から

今年も、もう残り1か月余りとなりました。1年経つのは早いものですね。
今年起こった技術に関わる事件のニュースを振り返ってみると、マクドナルドの鶏肉偽装、タカタのエアバック問題、東洋ゴム工業の免震ゴムデータ改ざん、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン排ガスデータ改ざん、旭化成建材の杭打ちデータ改ざん、太洋物産の肥料データ偽装など、技術者や企業の倫理に関わる問題が際立っています。

その中で10月の半ばに発覚した横浜のマンションが傾いた問題の一報を知ったのは、電車の中でスマホのヤフーニュースを見ていた時で、技術者倫理の講義を行うために大学に向かう道中のことでした。そのため、そのまま講義でこの問題の概要を話し、この後起こる事態や影響を話しました。
ちなみに杭を“抜く”作業は、以前、住いの目の前で工事をしていたのを眺めていて、鮮明な記憶があります。写真も撮っていました。瓶からコルクを抜くような感じです。まさに、“杭抜き”です。
それにしても、この手の問題・事件は、個人の資質だけで片付けられません。組織内での隠ぺいや慣習なども加わり、会社や事業の規模が大きくなれば、それだけ一層影響が大きくなります。
ここまで大きくなるまでに、何とかならなかったのかとつくづく感じます。
そのような状況下、注目している対策の一つは、トレーサビリティー(追跡可能性)です。トレーサビリティーは原料から製造・流通に至るまでの過程でどのように“もの”が流れたか履歴をとっていくものです。食品業界では、食の安全のため、既に導入が進んでいます。そのうち、建造物や工業製品でも応用され、浸透していくのではないでしょうか?
そうそう、このコラムは、「色仕掛け」でした。それでは、トレーサビリティーを塗装の話に持っていきましょう。塗装の場合のトレーサビリティーはどうなるのでしょう。
既に、原材料としての「塗料」は化学物質を含有しているだけあって、以前から労働安全衛生や欧州の環境規制の対策で、かなり管理が進んでいます。
実際、塗料メーカーに塗料のMSDS(写真)を請求すれば、発行してくれます。(最近は、データ化しています)
 しかし、「塗装」となると、材料としての塗料の成分だけを管理すればよいわけではありません。使用する塗料のほか、前処理・下地処理、塗料の塗付、乾燥という工程をたどるため、素材の下地や塗膜は化学的・物理的にも変化しています。これらすべてを管理してトレーサビリティーとなります。
トレーサビリティーは何のため?と聞かれれば、消費者の安心・安全と提供者側の信用の担保です。これは、そのうち詳しく説明させていただきます。
それにしても、どんな素晴らしい技術・システムであっても偽装やデータ改ざんは論外です。冒頭の事例を見れば結果は明らかです。仮にトレーサビリティーを導入しても、根本に偽装やデータ改ざんをしていていては、同じことです。いや、逆に悪質です。やはり、信用が第一ですね。

2015.11.30

小柳拓央のコラム

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