産業色彩技術協会

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親父とハンダの話

約30年前、中学生時代の話です。
技術家庭の授業でゴミ箱を制作する実習がありました。ブリキを金バサミで裁断、折り曲げハンダで接合して、仕上げは各自が家で好きなようにペイントするのが課題です。
私は実家が塗装屋であることをいいことに、工場で塗装してしまおうと考えました。 当時、工場で塗装していたものにタバコのLARKの関連商品がありました。えんじ色の塗装とLARKのシルク印刷を扱っていたことから、親父に頼みました。
私:「このゴミ箱をLARKと同じに塗装させてよ。」
父:「いいのか?じゃあ、最後にやってみな。」
と少々意味深な答え。

塗装して乾燥炉から出てきた瞬間、唖然としました。
何と、ゴミ箱の底が抜けていました。

私:「何で!?」
父:「当たり前だろ。ハンダだから焼付したら、壊れんだよ。自分でハンダ付けしたんだろう?分かんないの?」
私:「でも、ハンダの融点の方が焼付温度より高いんじゃないの?」
父:「一応は考えたんだな。でもよ、緩んだところが材料に引っ張られたんだよ。理屈じゃないの。」
私:「知っていたら言ってよ!」
父:「お前はお客じゃないし、そもそも、これ勉強なんだろ。いい勉強になっただろ?」
私:「・・・。」

結局、ハンダ付けをやり直し、買ってきたラッカースプレーで再塗装。幸いLARKのロゴは、シルク印刷で綺麗に仕上がりました。学校に持って行ったところ、技術の先生から「さすが塗装屋の息子だな。」と言われたのを覚えています。 ほとんどシルク印刷のおかげです。

さて、時が過ぎて先日の話です。
知り合いが、「ちょっと塗装で相談に乗ってくれる?」とやって来ました。見せられたのがブリキの容器。 それもハンダ付けしているものです。見た目、塗装は出来ています。
知人:「昔からの塗装屋が、もういい歳でさ、廃業するんだって。これ、面倒見てくれないかな?○○円くらいで。」
私:「塗料の種類は何ですか?」
知人:「お任せだから分からないよ。」
私:「1個ダメにしてもいいですか?」
了解を得て、ラッカーシンナーを垂らしてみました。溶けません。
私:「ラッカー塗料じゃないですね。じゃあ、セロテープで…。ベリ!」
知人:「えっ!、何で?」
私:「ハンダだから普通に焼付したら壊れますよ。たぶん、焼付塗料ですが生焼け。工夫というか手抜きというか、ご判断はお任せします。」

いつの間にか、自分があの時の親父と同じ様なことを言っているのです。中学生の時のあの経験、確かにいい勉強になったと今では感じます。

2015.08.03

小柳拓央のコラム

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