産業色彩技術協会

日本語 / English
お問合せ
一般社団法人産業色彩技術協会は、塗料塗装業界の進歩と発展を目指します。
イメージ

楳図かずお訴訟にみる塗装と景観利益 「#1 まことちゃんハウス」 

 今から6年以上前のこと。2009年1月28日、東京地方裁判所において「外壁の色について、法律上保護すべき景観利益はない」という判決が言い渡されました。 これは、漫画家楳図かずおさんが東京都武蔵野市に新築した自宅について、周辺住民が「色彩の暴力」「形の暴力」であるとして、赤白縞の「外壁の撤去など」を求めた訴訟です。
事の発端は、2007年8月。周辺住民2人が「景観」を理由に楳図宅の建築差し止めを求める仮処分を東京地裁に申立てたことから始まりました。これに対して東京地裁が「特別な景観がある場所ではなく、法律上保護に値する景観利益があるとは認められない」として申立を却下したため、同年10月、この周辺住民は、「赤白縞塗装の中止」を求めて訴訟を起こしました。もっとも翌年3月には構想通り赤い塔付き赤白縞の自宅が完成。  そこで、件の2人が請求内容を「外壁の撤去など」に変更し、撤去するまで毎月10万円の支払いを求める訴訟が係属していたのです。

冒頭でも述べましたが、東京地裁(畠山稔裁判長)は、自宅が建設された場所が第一種低層住居専用地域として、閑静な住宅地を目指して整備された経緯を指摘した上で、「外壁の色彩には法的規制はなく、住民間での取り決めもない。景観利益を違法に侵害するとはいえない」。 平穏に生活する権利についても「不快感を抱かせても、受忍限度を超えて侵害するとはいえない」として、原告側の主張をすべて退け、本件は楳図さんの全面勝訴となりました。 判決後、楳図さんは「(今後の近所付き合いは)素直にやっていきたい。多少間を置くのも仲良くする方法で、気を配りながら生活をしていきたい」と何とも含蓄のある謙虚な発言をしていますが、このような「景観利益」をめぐる建築主と地域住民の対立は枚挙にいとまがありません。近年、経年マンションが増え続ける中、皆さんの住居のすぐそばでリノベーションや大規模な建て替えが行われることは非現実的な話ではなくなっています。誰もが争いの当事者になる可能性を持っており、しかもその際、「塗装」が争いの種になる可能性があるのです。 今後、塗装業者は、「景観利益」に配慮した塗装を求められることが多くなるかもしれませんね。

…次回「#2 景観利益」へ続きます

2015.08.03

五十嵐丈博のコラム

ページのトップへ戻る